水曜日, 12月 26, 2012

Apple maps が使っているあのデータのハナシ。


今年はやっぱりこのネタで締めたい。
Apple mapsだ。

ここでは2012年3月にリリースした iPhoto maps と9月にリリースした iOS6 maps の両方をまとめて Apple maps とするが、それにしてもこの1年、パチンコガンダムも含めて、予想以上の地図ネタを Apple には投入してもらったとともに、良い意味でも悪い意味でも、OpenStreetMap の知名度向上に多大な貢献をいただいたことに改めて感謝したい。

さて、Apple maps である。現在 Apple Maps には OpenStreetMap 以外にも多くの地理空間情報が使われている。実際に、日本の大部分はインクリメントP社のデータが使用されているし、グローバルにみても TomTom や Waze といったデータも使用されている。Appleから正式に公開されている Attribution を読むと、この中に興味深いデータに気づく。












Flickr Shapefiles Public Dataset だ。写真アーカイブで有名な Flickr が地理空間情報のしかもオープンライセンスである CC0 ライセンスで提供されていたことは、この Apple 騒動で知った。
Apple は少し古い Ver1.0 を使っているが、現在は ver2.0 が以下からダウンロードできる。v1で18万件、v2で27万件のジオタグ写真から生成された、いわば写真投稿者のマインドマップを図化したものである。

ダウンロードしたデータを解凍すると以下のような GeoJSONファイルが展開される。

flickr_shapes_counties.geojson
flickr_shapes_countries.geojson
flickr_shapes_localities.geojson
flickr_shapes_neighbourhoods.geojson
flickr_shapes_regions.geojson
flickr_shapes_superseded.geojson
flickr_shapes_continents.geojson

この中の、flickr_shapes_continents.geojson ファイルを開いてみよう。FOSS4Gツールの代表的デスクトップGISであるQGISをたちあげて、GeoJSONファイルアイコンをQGISに放り込むだけである。












せっかくなので、ちょっと色分けとラベル表示をしてあげると、Flickrユーザの頭の中の世界の大陸が描かれた。みんなの頭の中のアジアって、こんなに大きいのかとしばし観察。ユーラシア大陸という認識は存在しなかった。











実際の地図と比較するため、Google投影法(900913)に変更後、OpenLayersプラグインを使ってOpenStreetMapレイヤを読み込み、Flickr大陸レイヤを半透明化。














よく見てみると、いろいろ面白い。例えばオーストラリア大陸の北側はパプアニューギニアまで含めている。オセアニアの境界にむしろ近い。















今度は国別のプロットをまとめた flickr_shapes_countries.geojson を見てみる。














こうやって見てみると、日本は大きい! 














でも、山口県の一部が韓国になっている…orz














東南アジア全域を見渡すと島国のインドネシアも大きく見えたり、内陸部の国境沿いは国が決めにくいのか空白域が大きいなど Flickr ユーザーの頭の中が見え隠れする。


















というわけで、見始めると止まらなくなるこの Flickr データ、いったい Apple maps はどのようにこれを使おうをしているのだろうか。

わかりやすいのは Apple の iPhoto のジオタギングで、地名タギングのレコメンドだろう。これは Flickr データが写真アーカイブサービスとして使われている Flickr のジオタギングから発生したデータであるので有効性が高いだろう。そしてあくまで推測ではあるが、Appleはナビサービスとして、このデータを使おうとしているのではないだろうか。

Flickrデータをそのままマッピングしても、地図としての価値はほとんどないくらいにひどいデータである。しかし、マインドマップとして利用者の頭の中を推測するには非常に有効である。人間の認識は非常に曖昧で、思い込みもある。「オーストラリア大陸に旅行に行きたい」という人が、実はパプアニューギニアも含めたオーストラリア大陸をイメージしているかもしれない。

現時点は Apple はかき集めてきた様々なデータの融合に失敗し、ドタバタ劇を演じてきた。しかし、集めたデータのリストを見ると、対人間を意識したしたたかな Apple の狙いも見え隠れする。2013年は「さすが Apple!」と思わせる、驚きの地図サービスへの進化を期待している。

この記事は FOSS4G Advent Calendar 2013 12/24担当分だったものです